LOADING ...
レース
01/23/2017

最高のライバル

1960年代のフォード対フェラーリの一騎打ちを振り返る新作ドキュメンタリー

この『24時間の戦い』というタイトルは、ストーリーからすると少々的外れかもしれない。車と映画の熱烈な愛好家として知られているアダム・カローラとネイト・アダムスの手によるこの芸術的な最新レースドキュメンタリーは、特定の24時間レース1戦を取り上げたものではなく、1960年代の半ばに、フェラーリとフォードが繰り広げたル・マンでの覇権争いをテーマとしているからだ。

 

それにしても当時のあの戦いはいったい何だったのだろう? 恐ろしいほど強烈なマシンを造り上げ、エンジニアはしのぎを削り合い、勇敢なドライバーが文字どおり生死を賭けて戦ったのだ。勝者には惜しみない称賛だけでなく、市場での話題を集めることで財政的なメリットも与えられた。

 

レースに心血を注ぎ、レースの合間に市販車を販売するレーシング・チーム、フェラーリとの決闘に向けて、フォードは「日曜日にレースに勝ち、月曜に車を売る」と言う有名な言葉を放棄した。

 ル・マンを駆けるジョン・サーティースのFerrari 250 P(1963年)

しかし、この戦いがひと段落した今、改めて振り返ってみると、GT40はその後も連綿とフォードを象徴するモデルのひとつとなっているし、フェラーリは、レースのTV放映を通じて、将来は絶対にアメリカ車を購入しようという思いを抱いていた人々の夢を赤い車に向けることに成功したと言える。

 

「このライバル対決で人々は、フェラーリがどんなメーカーで何を目指しているのかを知った」とアダムズは言う。TVコメンテーターでありレーシングドライバーでもあるカローラと組んだアダムズは、ポール・ニューマンのレースへの情熱を描いたドキュメンタリー『ウィニング:ポール・ニューマンのレース人生』や、これから公開されるキャロル・シェルビーとアフリカ系アメリカ人レーサーの草分け的存在のウィリー・T・リブスをフィーチャーするフィルムにも関わっている。

 

「この作品は、自動車レース史上初めて、レースに勝つために何100万ドルも注ぎ込んだフォードを捉えた映画なんだ」とアダムズ。「フェラーリに関して言えば、この戦いの後にファクトリーチームのル・マン撤退を表明し、フォーミュラ1に全力を注ぐという決断を下した。恐らくフォードと同等の予算をレースに注ぎ込ことは、到底できないことがフェラーリも気づいたのだろう。今日、多くのレースシーンで我々が目にする勝利を賭けた高価な戦いは、この時に始まったと言えるだろう」

 

アダムズは、カローラと共にフェラーリとフォードの戦いを記した2009年発行のA.J.ベイミの『Go Like Hell』を読んだ際に、そこに劇的なドラマを構成する要素が全て揃っていると気づいたという。ちなみにこの作品は長い間、映画化されると噂されてきた。

デイトナでFord GT40と競り合うペドロ・ロドリゲスのFerrari 330 P2(1965年) 

1960年代前半、ヘンリー・フォード2世はフェラーリの買収を試みたがエンツォ・フェラーリはこれを拒否。デトロイトはその恨みをサーキットで晴らすことを決意する。それもドライバーにもマシンにも、もっとも厳しい欧州のビッグイベント、ル・マン24時間を舞台に選んだのだ。何よりル・マンは、フェラーリが250や330でコンスタントに活躍し、事実上席巻していたと言っていい場所でもあった。ポール・フレールやフォーミュラ 1世界チャンピオンのフィル・ヒル達がステアリングを握り、1960年から65年までの6年間連続で勝利を飾っていたのだ。

 

『24時間の戦争』で強調されているように、フォードはキャロル・シェルビー率いる大規模な軍団を築き、フェラーリ活躍の場に乗り込んだ。確かに速かったが、あっけなくリタイアし、1965年の挑戦は不発に終わった。

 

「フェラーリとフォード、双方がどれだけの労力を注ぎ込んだことか。レーシグママシンを設計し、造り上げた後は、ひたすらテストとセッティングを繰り返して24時間走り続けても壊れないように仕上げていくんだ」とアダムズは語る。「グリッドには血と汗と涙が染み込んでいる」

 ル・マンにおけるフェラーリのパドック(1963年)

1966年、幸運の女神はフォードに微笑んだ。流麗なフェラーリのP3とP4からのプレッシャーを受けながらも、その後4年間フォードGT40マークIIあるいはGT40マークI 「Gulf」を走らせた伝説的なドライバー、ブルース・マクラーレン、A.J.フォイト、そしてダン・ガーニーがサルテ・サーキットで伝説に残る勝利を手にした。

 

1969年以降、フォードもフェラーリもワークスとして表彰台に上がる栄誉からは遠ざかっている。

 

「この勝負は結局、最後は60年代後半に勝利したフォードが勝ったと言えるかもしれない。でも、私にとっては、この戦い全体の驚くべき点はその二元性にあると思っている」とアダムズ。「エンツォ・フェラーリの人生はまさにレースそのもので、必要に迫られてスポーツカーを販売していた。一方で巨万の富を築いたヘンリー・フォード2世は、フェラーリ買収に失敗したところで一旦はレースを諦めた。しかし突然、持てる財力を注ぎこんでライバルを倒しにかかった。それも考え得る最高のステージでね。あればサーキットという場での、武器を使った戦いだった」

 

『24時間の戦争』はiTunes、米国Amazon、www.chassy.comにて配信中です。

 



レース
伝統のル・マン 24 時間耐久レースは、長年にわたり跳ね馬の活躍の舞台となってきました 詳細を読む 
06/13/2016
レース
エンジニアの代わりはなく、彼らのレースは1日以上に及ぶ 詳細を読む 
07/06/2016