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Ferrari 208 GTB Turbo、 フェラーリの先駆的なモデル

Ferrari 208 GTB Turbo、 フェラーリの先駆的なモデル

F1のターボ技術が1982年にフェラーリのロードカーにも採用されるようになった背景を探る

Richard Aucock

1980年代のイタリアでは、2.0リッター未満の小排気量エンジンを搭載した車両に対して減税措置が適用されていました。フェラーリ車のような特に高価なスポーツカーの場合、税金を安く抑えるということはとても重要でした。そこでマラネッロは、イタリアの顧客に人気があった「ダウンサイズ」版のV8エンジンによってこの制度を利用しました。1980年代までには、208 GTBや208 GTSのような2.0リッターモデルを有するドライバーの要求はいちだんと厳しくなります。彼らは節約を好み、新車の購入時に支払う税金を半分以下に抑えながらも、より高い性能を求めました。幸いにもフェラーリには打開案があり、そのソリューションはすでにサーキットで大きな成功を収めていました。ターボチャージャーがそれです。

フロントリッドに取り付けられた新型グリルが特徴の Ferrari 208 Turbo 写真:Cavazzuti
フロントリッドに取り付けられた新型グリルが特徴の Ferrari 208 Turbo 写真:Cavazzuti

1982年のFerrari 126 C2はポールポジションクラスでした。ジル・ビルヌーブとディディエ・ピローニが駆るマシンは、排気量わずか1.5リッターのV6エンジンが最高出力650hp以上を発生すると噂されていました。そうした性能を支えていたのは、非常に強力な2基の大型KKKターボチャージャーにほかなりません。もちろん1982年は、フェラーリのドライバーにとって悲劇のシーズンとなりましたが、フェラーリがその年のコンストラクターズタイトルを獲得したことで、126 C2はその圧倒的な速さを証明しました。そして1982年のトリノモーターショーでニューモデルが発表されます。それが208 GTB Turboです。このモデルは、先代と同じ2.0リッターのV8エンジン(3.0リッターのエンジンにシリンダーインサートを用いることで排気量を縮小)を搭載していましたが、そこにはKKK K26ターボチャージャーが追加されていました。これはサーキットからロードへの純粋な技術移転であり、その効果は絶大でした。

 

先代の208 GTBは、堅実に155hp/6,800rpmの最高出力を発生しましたが、 ニューモデルの208 GTB Turboでは、その出力が220hp/7000rpmまで大幅に引き上げられました。さらに、最大トルクも18%増加し、正真正銘の150mphカーになったのです。0-60mph加速のタイムは、わずか6.6秒。今日の基準に照らし合わせてみても、まさしく高速のスポーツカーであると言えます。1982年当時としては驚くべきことでした。外見は、派生元のFerrari 308 GTBに類似していましたが、いくつかの違いがありました。フロントでは、ラジエーターグリルの下のロアフロントスポイラーに冷却スロットが追加されました。冷却スロットは空気の流れをラジエーターへと導くためのもので、その空気はフロントリッドに取り付けられたサテンブラックの新型グリルから排出されます。リヤでは、エンジンカバーにU字型のルーバーが追加されたほか、リヤバンパーが分割されて中央に冷却ダクトが組み込まれました。

リア部分の'NACA'エア・インテークが208 Turboを通常のFerrari 308 とは異なるモデルにしています。 写真:Cavazzuti
リア部分の'NACA'エア・インテークが208 Turboを通常のFerrari 308 とは異なるモデルにしています。 写真:Cavazzuti

サイドでは、ボディ両側下部にNACAダクトが追加され、“Pininfarina”ロゴがリヤホイール後方に移されています。そしてリヤの重要なディテールでもある“TURBO”エンブレムが、“208”の数字エンブレムの下部に配置されました。インテリアに目を向けると、フェラーリ初のこのターボモデルは、車内にも“TURBO”エンブレムを設けていたほか、時計の代わりにブースト計が取り付けられました。レザーはオプションでしたが、シートには贅沢なZelnaファブリックのトリムが部分的に使用されています。Ferrari 208 GTB Turboが1982年に発売されると、その販売用のパンフレットにはF1のスターであるピローニが採用され、F1との結びつきが強調されました。1983年にはオープントップの208 GTS Turboも発売されます。イタリア国内のみの販売であるにもかかわらず、208 Turboモデルはいずれも好調な売れ行きを示しました。

 

このフェラーリ初のターボチャージャーモデルは、その性能とドライビングフィールが非常に優れていたことから、顧客からの絶大なニーズがありました。その後、ターボを装備した308の派生モデルが続く中、1984年にはその中で最も有名な288 GTOが登場します。1987年にF40が続きますが、その後は2015年に488 GTBが発売されるまで、ターボチャージャーを搭載したフェラーリのニューモデルが誕生することはありませんでした。もちろん、それ以降の歴史はご存知のとおりです。フェラーリのロードカーは、スクーデリアがF1で進化させたターボチャージャーの恩恵を受け続けています。ターボチャージャーを搭載したフェラーリ初のオンロードモデルを振り返ることによって、F1マシンから公道モデルへの純粋な技術移転であったという事実を知ることができます。今後もこのような状態が末永く続くことを願っています。

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